「リフォームの費用を、少しでも安く抑えたい」
「どうせなら、自分の手で理想の空間をつくってみたい」
古くなったユニットバスの交換を考えたとき、多くの方が一度はDIY、つまり自分でリフォームを行うことを検討するのではないでしょうか。インターネットで検索すれば、まるでプラモデルを組み立てるかのように作業を進める動画が見つかりますし、ホームセンターには様々な道具や材料が並んでいます。それらを見ていると、「自分にもできるかもしれない」という気持ちが湧いてくるのは、とても自然なことです。
しかし、その一歩を踏み出す前に、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。費用を抑えたいという切実な思いや、自分の手で何かを成し遂げたいという純粋な気持ちは、決して間違っていません。ただ、ユニットバスのリフォームには、塗装や棚の取り付けといった一般的なDIYとは全く異なる、専門的な知識と技術が求められる領域が数多く存在します。
もし知識が不十分なまま作業を進めてしまうと、費用を抑えるどころか、かえって高くついてしまう「取り返しのつかない失敗」につながる可能性も少なくありません。
この記事は、DIYの可能性を完全に否定するものではありません。むしろ、その「自分で何とかしたい」という大切な気持ちを、安全かつ賢い形で実現するための道しるべです。すべてを自分で行うのではなく、「プロと協力する」という新しい関わり方も含め、後悔しないための知識を一緒に確認していきましょう。
【結論】ユニットバスのフルリフォームDIYがほぼ不可能な5つの理由
「やろうと思えば、何とかなるのでは?」と感じるかもしれませんが、ユニットバスの交換を伴う本格的なリフォームは、専門家が「やめたほうがいい」と口を揃えるだけの、はっきりとした理由があります。それは脅しや大げさな話ではなく、安全と法律、そして建物の寿命に関わる、とても重要な問題なのです。
資格がなければ触れられない領域がある
ユニットバスのリフォームには、水道の給水管や排水管をつなぐ作業、そして照明や換気扇の電気配線工事が必ず含まれます。これらの作業は、誰でも自由に行ってよいわけではありません。水道管の接続には「給水装置工事主任技術者」、電気工事には「電気工事士」という国家資格が法律で定められています。もし無資格で工事を行い、漏水や漏電といった事故が起きた場合、火災や感電、階下への水漏れなど、自分だけでなく隣人をも巻き込む大きなトラブルに発展しかねません。
見えない場所での防水処理が極めて難しい
ユニットバスが水漏れを起こさないのは、浴槽や壁、床が一体となっているからだけではありません。そのユニットバスを設置する前の段階で、壁や床に専門的な防水処理が施されています。特に、排水口周りの処理は非常に繊細で、わずかな隙間が将来の大きな水漏れにつながります。万が一、壁の内部や床下で水が静かに漏れ続けると、家の土台や柱を腐らせる原因となり、建物の強度そのものを脅かすことになります。この「見えない部分」を完璧に施工する技術こそ、プロの専門性が最も発揮される部分です。
特殊な工具と運び込みの知識が必要
ユニットバスの解体や設置には、普段の生活ではまず目にしないような専門の工具が必要です。それらをすべてレンタルや購入で揃えるだけでも、かなりの費用と手間がかかります。また、ユニットバスの部材は一つひとつが大きく、重たいものばかりです。狭い浴室や廊下、階段を通って運び込むには、家を傷つけないための養生の知識や、部材を運ぶ順番、効率的な動線を見極める経験が不可欠です。
集合住宅には特有のルールが存在する
もしお住まいがマンションなどの集合住宅の場合、DIYを始める前に管理規約の確認が必須です。多くの場合、水回りに関する大規模なリフォームは、管理組合への届け出や承認が必要とされています。また、解体作業などで発生する大きな音や振動は、近隣住民とのトラブルの原因になりやすいものです。プロの業者は、こうした規約の確認や近隣への挨拶などを手順に含めていますが、個人で行う場合はすべて自分で対応しなくてはなりません。
すべての保証がなくなり、自己責任に
当然のことながら、DIYでリフォームを行った場合、ユニットバス本体のメーカー保証や、工事に対する保証は一切適用されません。設置後に製品の不具合が見つかっても、取り付け方に問題があったと判断されれば交換は難しいでしょう。水漏れなどのトラブルが発生した場合も、その修理費用はすべて自己負担となります。結果的に、業者に依頼するよりもはるかに高額な出費になってしまうケースも珍しくないのです。
「自分でできる」はどこまで?DIY可能な範囲と注意点
ユニットバスの交換という大掛かりなリフォームは専門家に任せるべきですが、だからといって「すべてお任せ」でなければならないわけではありません。「自分でできること」と「プロに任せるべきこと」を正しく見極めることで、費用を抑えつつ、リフォームへの愛着を深めることができます。ここでは、比較的安全に挑戦できるDIYの範囲をいくつか紹介します。
気軽に始められるプチDIY
これらは、特別な工具や専門知識がなくても、製品の説明書をよく読めば交換や設置が可能なものです。お風呂の使い勝手を良くしたり、雰囲気を少し変えたりするのにぴったりです。
シャワーヘッドやホースの交換
節水タイプや水圧の強いものなど、機能的な製品が数多くあります。工具不要で、手で回すだけで交換できるものがほとんどです。
鏡の交換や追加
既存の鏡を、曇り止め機能付きのものに交換したり、好きな場所に新しい鏡を追加したりできます。ただし、壁に穴を開ける場合は、内部に配管などが通っていないか事前に確認が必要です。
収納棚やタオルフックの増設
吸盤タイプやマグネットタイプなら、壁を傷つける心配もなく手軽に収納を増やせます。家族の成長に合わせて位置を変えられるのも利点です。
少し工夫が必要なカスタマイズDIY
既存のユニットバスはそのままに、見た目の印象を大きく変えたい場合に挑戦できるDIYです。作業時間はかかりますが、完成したときの満足感は大きいでしょう。
壁に化粧フィルムやパネルシートを貼る
浴室専用の防水シートを使えば、壁の色や柄を変えることができます。空気が入らないように丁寧に貼り、端の部分をコーキング材でしっかり防水処理することが成功の鍵です。
床に浴室用シートを貼る
既存の床の上に重ねて貼るタイプのシートです。現在の床の冷たさや滑りやすさが気になる場合におすすめです。シートの貼り付けと、排水口周りの丁寧な処理がポイントになります。
DIYを行う上での共通の注意点
どの作業を行うにしても、必ず守ってほしいことがあります。それは、作業前に水道の止水栓を閉めること、電気系統の作業は絶対に自分で行わないこと、そして少しでも「難しい」「不安だ」と感じたら、無理せず専門家に相談することです。DIYはあくまで自己責任で行うもの。安全を最優先に、楽しめる範囲で行うことが何よりも大切です。
新提案!コストと満足度を両立する「プロとの分業」という選択肢
「全てをプロに任せる」か、「全てを自分で行う」か。ユニットバスのリフォームは、この二者択一で考える必要はありません。両方の良いところを組み合わせた、第三の道があります。それが、専門的な工事はプロに任せ、自分ができる範囲でリフォームに参加する「分業」という考え方です。この方法なら、コストを抑えつつ、リフォームへの満足度を大きく高めることが可能です。
「施主支給」で製品コストを管理する
施主支給(せしゅしきゅう)とは、リフォームに使うユニットバス本体や水栓金具などを、施主であるあなた自身が購入し、工事業者に取り付けだけを依頼する方法です。リフォーム会社の提示する価格よりも、インターネット通販やアウトレット品などを利用して安く製品を手に入れられる可能性があるのが最大のメリットです。自分の目で見て、納得した製品をじっくり選ぶ楽しみもあります。
ただし、注意点も理解しておく必要があります。まず、購入した製品のサイズや仕様が、自宅の浴室に本当に設置可能かどうかを自己責任で確認しなくてはなりません。また、工事日までに製品を自分で手配し、保管しておく必要があります。万が一、製品に不具合があった場合の責任の所在(製品の問題か、工事の問題か)が曖昧になりやすいという側面もあるため、事前に工事業者と保証範囲についてよく話し合っておくことが不可欠です。
一部の作業を自分で担当する
より積極的にリフォームに関わりたいなら、一部の作業を自分で担当するという方法もあります。例えば、「既存のユニットバスの解体と、出てきた廃材の処分は自分で行い、その後の設置からプロにお願いする」といった形です。解体作業は体力と時間を要しますが、その分、全体の工事費用から解体費や処分費を削減できます。
この方法を選ぶ場合、どの作業を自分で行い、どこからをプロに任せるのか、その責任範囲を契約前に書面で明確にしておくことが非常に重要です。また、解体してみたら予想以上に壁の内部が傷んでいた、といった不測の事態が起こる可能性も考えておく必要があります。
こうした柔軟な要望に応えてくれるかどうかは、リフォーム会社の方針によって異なります。特に、地域に根差した会社や、顧客との対話を大切にしている会社では、親身に相談に乗ってくれることが多いようです。成功の鍵は、一方的に要望を伝えるのではなく、専門家である業者と協力し、信頼関係を築きながら一緒にリフォームを進めていく姿勢にあります。
プロに全て任せた場合の費用相場と工事の流れ
DIYや分業と比較するためにも、専門の業者にリフォームを全面的に依頼した場合の、一般的な費用感と工事のスケジュールを知っておくことは大切です。具体的な金額は、選ぶユニットバスのグレードや家の状況によって変わりますが、全体像を把握しておくことで、より現実的な計画を立てることができます。
グレード別にみる費用のおおまかな目安
ユニットバスは、機能やデザインによって大きく3つのグレードに分けられます。表示されている価格は、本体価格と標準的な工事費を合わせた総額の目安です。
ベーシックグレード(50万円~80万円)
機能を必要最低限に絞った、最もシンプルなタイプです。浴槽、シャワー、鏡、照明、換気扇といった基本的な設備が揃っており、「とにかく新しく、きれいな浴室にしたい」という場合に適しています。
ミドルグレード(80万円~120万円)
最も多くの人が選ぶ、標準的な価格帯です。保温性の高い浴槽、乾きやすい床、節水シャワー、浴室暖房乾燥機といった、快適性を高める機能が充実してきます。デザインや色の選択肢も豊富になります。
ハイグレード(120万円~)
最新の機能を搭載した、最高級の価格帯です。肩湯やジェットバス、調光機能付きの照明、高音質の浴室スピーカーなど、日々のバスタイムを特別な時間に変えるための設備が満載です。素材の質感も高く、ホテルのような上質な空間を求める方に向いています。
相談から完成までの一般的な流れ
リフォームの相談を決めてから、実際に新しいお風呂が使えるようになるまでには、いくつかの段階を踏みます。工事そのものにかかる期間は、家の状況にもよりますが、おおむね4日から7日程度です。
相談・現地調査
リフォーム会社に連絡し、担当者に家に来てもらいます。現在の浴室の寸法を測ったり、壁や床下の状態を確認したりして、どのような工事が必要かを調査します。
プランの提案・見積もり
現地調査の結果をもとに、担当者が最適なユニットバスのプランと、詳細な見積書を作成してくれます。
契約
プランと見積もりの内容に納得できたら、正式に工事契約を結びます。
着工
契約内容に基づき、工事が始まります。近隣への挨拶や、家の中が汚れないための養生なども、業者が責任を持って行います。
完成・引き渡し
工事が完了したら、担当者と一緒に仕上がりを確認します。問題がなければ、引き渡しとなり、その日から新しいお風呂が使えるようになります。
どのようなリフォーム会社が自分たちに合っているのか、その考え方や姿勢を知ることも、安心して任せられるパートナーを見つけるための大切な一歩です。
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まとめ - 最適なリフォームは「正しい知識」と「信頼できるパートナー探し」から始まる
ユニットバスのリフォームを考えたとき、「自分でやってみよう」という気持ちが生まれるのは、とても素晴らしいことです。しかし、その挑戦には、専門的な資格や技術、そして見えない部分のトラブルに対応する知識が不可欠であることも、ご理解いただけたのではないでしょうか。
費用を抑えたいという思いは、決して間違いではありません。その思いを安全に実現するためには、「どこまでなら自分でできるのか」という境界線を正しく知ることが何よりも重要です。シャワーヘッドの交換のような簡単な作業から、プロとの「分業」という新しい関わり方まで、リフォームへの参加の仕方は一つではありません。
大切なのは、自分だけで全てを抱え込まないことです。一見すると費用が高く感じる専門家への依頼も、長期的な視点で見れば、建物の安全を守り、保証という安心を手に入れるための、最も確実な投資と言えるかもしれません。
最終的にどのような方法を選ぶにせよ、後悔しないリフォームへの第一歩は、信頼できる専門家に相談し、自分の家の現状を正確に把握することから始まります。今回の知識が、あなたにとって最適なリフォームの形を見つけるための、確かな土台となれば幸いです。
まずは、小さな疑問や不安から、気軽に話を聞いてみてはいかがでしょうか。