冬の朝、浴室に一歩足を踏み入れた瞬間の、あのヒヤリとするタイルの冷たさ。何度掃除しても、目地の奥からうっすらと現れてくる黒いカビ。そして、濡れたタイルで足を滑らせないようにと、無意識に慎重になってしまう動き。
もし、こうした日々の小さなストレスに心当たりがあるのなら、それはあなただけが感じている悩みではありません。昔ながらのタイルで作られた在来工法の浴室は、趣がある一方で、現代の暮らしの中では多くの不便さや不安を抱えがちです。
「そろそろリフォームを」と考えたとき、多くの方がまず気にするのは、ユニットバスへの交換にかかる費用でしょう。もちろん、予算はとても大切です。しかし、このリフォームの本質は、単に古くて寒いお風呂を新しくすることだけではありません。
それは、長年見過ごされてきたかもしれない、家の構造そのものに関わる問題に目を向け、住まいの寿命を延ばすための「未来への投資」という側面を持っています。日々の悩みを解消するだけでなく、これから先も安心して暮らせる家を守るために。まずは、その大切な一歩を踏み出すための知識を、一緒に見ていきましょう。
劇的に変わる暮らし!ユニットバス化がもたらす5つの確実なメリット

タイル風呂から最新のユニットバスへリフォームすると、私たちの暮らしは具体的にどのように変わるのでしょうか。それは、単に見た目がきれいになるというだけではありません。日々の快適さや安心感、そして家事の負担まで、驚くほど多くの面で良い変化をもたらしてくれます。
1. 浴室全体の断熱性が飛躍的に向上する
ユニットバスは、壁、床、天井のパネルの内部に断熱材が組み込まれていることが多く、浴室全体が魔法瓶のように保温される構造になっています。これにより、冬場の一番風呂でもヒヤッとすることがなくなり、お湯も冷めにくくなります。急激な温度変化によって起こるヒートショックのリスクを大きく減らし、家族みんなの健康を守ることにつながります。
2. 掃除の手間と時間が圧倒的に少なくなる
ユニットバスの壁や床は、汚れがつきにくく、落としやすい素材で作られています。タイルのように目地がほとんどないため、カビが発生しにくく、日々の掃除はシャワーでさっと流して軽く拭くだけで十分です。これまで週末に時間をかけて行っていたカビ取りや目地の掃除から解放され、その時間を他のことに使えるようになります。
3. 水漏れのリスクを根本から防げる
在来工法の浴室は、床や壁のつなぎ目など、見えない部分から水が漏れ出すリスクを常に抱えています。一方、ユニットバスは、工場で精密に作られた防水性の高い床パネル(防水パン)の上に壁や天井を組み立てる「箱」のような構造です。これにより、浴室からの水漏れを根本的に防ぎ、家の土台や柱が湿気で腐食するのを守ってくれます。これは、住まいの寿命を延ばす上で非常に重要な点です。
4. 最新機能でバスタイムがもっと快適に
浴室暖房乾燥機を付ければ、冬は暖かく、雨の日は洗濯物の乾燥室として活躍します。節水効果の高いシャワーは、毎月の水道代の節約に貢献します。滑りにくく、またぐ高さが低い浴槽は、小さなお子様からお年寄りまで、誰もが安心して使えるバリアフリー設計です。ライフスタイルに合わせて、必要な機能を自由に選べるのも大きな魅力です。
5. 工事期間が比較的短く、計画が立てやすい
在来工法で浴室を一から作る場合、左官やタイル貼りなど、天候に左右されやすい職人仕事が多く、工期が長引くことがあります。その点、ユニットバスは工場で作られた部材を現場で組み立てるため、比較的短期間で工事が完了します。一般的には1週間前後で完成することが多く、リフォーム中の計画が立てやすいのもメリットです。
【最重要】見積り額が倍増?タイル風呂リフォームの「見えないコスト」

「工事費込みで80万円」といった広告を見て、リフォームの予算を考えている方もいるかもしれません。しかし、特にタイル風呂からのリフォームの場合、その金額はあくまで「基本的な工事」に限ったものである可能性が高いことを知っておく必要があります。本当の総額は、古い浴室を解体して、壁や床の「中」を見てみないと確定しないのです。
見積書に含まれる「基本工事費」とは
最初にもらう見積書に記載されているのは、一般的に以下のような項目です。
既存の浴室の解体費用
解体で出た廃材の処分費用
新しい給水管、排水管、電気配線の工事費用
ユニットバス本体の製品代
ユニットバスの組み立て、設置費用
これらは、どの家でも必ず必要になる、いわば最低限の工事内容です。問題は、このリストに含まれていない、予期せぬ追加工事が発生する可能性が非常に高い、という点にあります。
要注意!解体後によく見つかる追加工事
タイル風呂は、目に見えないタイルのひび割れや目地の隙間から、長年にわたって少しずつ水が内部に染み込んでいるケースが少なくありません。そのため、解体してみると、家の構造に関わる深刻な問題が見つかることがあります。
土台や柱の腐食
染み込んだ水分によって、浴室周りの木材が腐っている状態です。家の強度に直接関わるため、新しいユニットバスを設置する前に、腐った部分を交換・補強する工事が必須となります。
シロアリの被害
湿気を含んで柔らかくなった木材は、シロアリの大好物です。被害が見つかった場合は、駆除と被害箇所の修繕が必要になります。
基礎のコンクリート工事
ユニットバスを水平に設置するためには、しっかりとしたコンクリートの土台が必要です。既存の基礎の状態が悪い場合、新たにコンクリートを打設する工事(土間コンクリート工事)が発生します。
これらの追加工事は、家の安全を守るために絶対に省略できないものです。だからこそ、契約前の段階で「どのような追加工事が発生する可能性があるか」を丁寧に説明し、その場合の概算費用まで示してくれる業者こそが、本当に信頼できるパートナーと言えるでしょう。
後悔しない業者選びのための4つの「質問力」

タイル風呂からユニットバスへのリフォームは、単に製品を選んで設置するだけの単純な工事ではありません。家の見えない部分の状態を正確に診断し、必要な補修を的確に行う、いわば「住宅の健康診断」のような側面を持っています。だからこそ、どの業者に依頼するかは極めて重要です。ここでは、安心して任せられる優良な業者を見抜くための、具体的な質問を4つご紹介します。
1. 現地調査で聞いておきたい質問
担当者が初めて家を見に来てくれたとき、ただ浴室の寸法を測るだけで終わらせてはいけません。この段階で、業者の専門性や姿勢を見極めることができます。
質問:「浴室の床下や壁の内部など、点検口から見える範囲で構わないので、状態を確認していただくことは可能ですか?」
丁寧な業者であれば、懐中電灯などを使って、現在の構造体の状態や水漏れの痕跡がないかなどを積極的に確認しようとしてくれます。この一手間を惜しむことなく、リスクを事前に把握しようとする姿勢があるかどうかは、大きな判断材料になります。
2. 見積もり提示時に確認すべき質問
複数の業者から見積もりを取ると、金額に差が出ることがあります。その差がどこから生まれているのかを理解することが大切です。
質問:「この見積もりに含まれていない工事で、追加費用が発生する可能性があるものは何ですか?もし発生するとしたら、どのようなケースで、おおよそ、いくらくらいかかりますか?」
この質問に対して、「解体してみないと分かりません」と答えるだけでなく、「例えば、土台が腐食していた場合は約〇万円、シロアリ被害があれば別途〇万円程度の費用がかかる可能性があります」といったように、過去の経験から考えられるリスクと、その場合の概算費用を具体的に示してくれる業者は信頼できます。
3. 実績について尋ねる質問
ユニットバスのリフォーム経験が豊富であることはもちろんですが、特に「タイル風呂からのリフォーム」をどれだけ手がけてきたかが重要です。
質問:「これまで手掛けられた、うちと似たようなタイル風呂からのリフォーム事例の写真などを見せていただくことはできますか?」
多くの実績を持つ業者なら、施工前後の写真や、場合によっては工事中の写真(例えば、腐食した柱を補修している様子など)も見せてくれるはずです。具体的な事例を見ることで、その業者の仕事の質や対応力をイメージしやすくなります。
4. 保証内容に関する質問
リフォームが完了した後も、安心して長く使い続けるためには、保証の内容をしっかり確認しておく必要があります。
質問:「ユニットバス本体のメーカー保証とは別に、御社が行った工事に対する保証は、どのような内容で、期間はどのくらいありますか?」
製品の保証と工事の保証は別物です。例えば、「工事が原因の不具合については、引き渡しから〇年間は無償で対応します」といった、独自の工事保証制度を設けている会社は、自社の施工技術に自信と責任を持っている証拠です。
工事期間は4〜7日!リフォームの全工程をシミュレーション

リフォーム中は、当然ながら自宅のお風呂を使うことができません。工事がどのくらいの期間で、どのような流れで進んでいくのかを事前に知っておくことで、銭湯や近所の親戚の家を借りるなどの準備を、落ち着いて進めることができます。ここでは、一般的な工事のスケジュールを1日ごとに見ていきましょう。
1日目:準備と解体
朝、職人さんが到着したら、まず初めに、資材の搬入経路や浴室の周りが汚れたり傷ついたりしないように、床や壁をシートで保護する「養生」という作業を行います。近隣への挨拶を済ませた後、いよいよ既存のタイル風呂の解体作業が始まります。壁や床のタイルを剥がし、浴槽を撤去していきます。
2日目:構造体の確認と設備工事
解体が終わると、これまで壁や床に隠れていた土台や柱の状態が明らかになります。この段階で、もし腐食やシロアリ被害などが見つかった場合は、補修・補強工事を行います。問題がなければ、新しいユニットバスに合わせて、給水管や排水管、電気の配線を設置し直す設備工事を進めます。また、必要に応じて床にコンクリートを打設します。
3日目:ユニットバスの組み立て
いよいよ、新しいユニットバスの部材が搬入され、組み立て作業が始まります。床の防水パンを設置し、その上に壁パネル、天井パネル、浴槽という順番で、手際よく組み立てられていきます。まるで大きなプラモデルのように、浴室の形がみるみるうちに出来上がっていきます。
4.日目:接続工事とドアの取り付け
浴槽やシャワー、換気扇などを、前日に準備しておいた給排水管や電気配線に接続していきます。すべての接続が終わったら、浴室の入り口に新しいドア枠とドアを取り付けます。この日の終わりには、お湯が出るか、換気扇は正常に動くかといった、一通りの動作確認が行われます。
5日目以降:内装仕上げと引き渡し
ユニットバスの設置に伴い、どうしても傷んでしまう脱衣所側の壁や床の内装をきれいに補修します。壁紙を貼り替えたり、床材を新しくしたりする作業です。最後に、全体の清掃を行い、施主であるあなたと一緒に最終確認を行います。問題がなければ、晴れて工事完了、引き渡しとなります。
どのような想いで仕事に取り組んでいるのか、その会社の姿勢を知ることも、安心して工事を任せられるかどうかの判断基準になるかもしれません。
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まとめ - 快適なバスルームは、10年後の家と家族への最高の投資
長年連れ添ったタイル風呂との別れは、少し寂しいものかもしれません。しかし、それを上回るほどの快適さと安心が、新しいユニットバスにはあります。冬でも暖かい浴室、カビの心配から解放される毎日、そして家族の安全。これらは、日々の暮らしの質を大きく向上させてくれる、何物にも代えがたい価値です。
そして、この記事で繰り返しお伝えしてきたように、タイル風呂からユニットバスへのリフォームは、単なる設備交換以上の意味を持ちます。それは、普段は見ることのできない家の内部を点検し、水漏れなどの潜在的なリスクから住まいを守るための、極めて重要な「メンテナンス」なのです。
費用だけで業者を選んでしまうと、こうした見えない部分の問題が見過ごされ、数年後に大きなトラブルとなって現れるかもしれません。そうならないためにも、価格だけでなく、家の構造をきちんと理解し、潜在的なリスクまで正直に説明してくれる、信頼できるパートナーを見つけることが何よりも大切です。
新しいバスルームは、今日の家族を笑顔にするだけでなく、10年後、20年後もこの家で安心して暮らし続けるための、最高の投資となるはずです。
まずは、あなたの家の浴室が今どのような状態なのか、専門家の目で一度見てもらうことから始めてみませんか。

